アルマン・ルソーといえば、世界中のワインファンの誰もが憧れを抱き、誰もが行ってみたいドメーヌのひとつです。
昔はネゴシアンへの販売を主としたぶどう栽培家でしたが、自分のところで最初から最後までワインを造り、ドメーヌ元詰の走りになった生産者のひとりでもあるんです。
少し前のことになりますが、3年前の99年6月に、幸運にも私は伝説のアルマン・ルソーを訪問できることになりました。高名な生産者ですから、さぞかし張り詰めた空気を持っているんだろう思っていましたので、緊張で手に汗を握りながら門をくぐりました。
事務所の扉をあけると、そこに真っ赤なセーターを着た、口ひげのある「ゴットファーザー」のような風貌のシャルル・ルソーさんが机の前に腕まくりをしながら座り、そんな彼を中心に、ルソー・ファミリーが揃って迎えて下さいました。
「いらっしゃい!」と、皆さんとてもフレンドリーなんです。特にシャルルさんの笑顔に、私の中で張り詰めていた緊張が一気にほぐれてしまいました。
ドメーヌ・アルマン・ルソーは1920年に設立されました。しかしシャルルさんが若いとき(1959年)に不慮の交通事故で、お父さまであるアルマンさんを亡くされました。
そのあとシャルルさんはひとりでずっと頑張って来ましたが、現在では息子のエリックさんと娘のコリーヌさんが除々にドメーヌを受け継ごうとしています。
今は息子さんと娘さんが協力してドメーヌと、そしてお父さんをサポートしています。シャルルさんはお客さまがきたとき、雄弁な社交を引き受けてドメーヌを盛り立てています。
息子さんと娘さんが父シャルルさんを見る目線には、大いなる親愛と、そして尊敬が感じられます。ブルゴーニュにありがちな、お家騒動もなく、いわば「ほのぼの系」のご家族です。
ルソー親子の会話ややり取りを近くで拝見していると、シャルルさんはとにかくコリーヌさんがかわいくてかわいくて仕方ないというのが伝わってきます。「伝説のルソー」と呼ばれる男性というイメージよりも仲のいいファミリーの、お嬢様を愛してやまない優しいお父さまという感じで、私の目にとても素敵に映り、ますますアルマン・ルソーのワインに惚れこんでしまったのです。
ちょうど私が伺ったときに事務所にの電話が鳴りました。電話口で応対しているシャルルさんがちょっと困惑ぎみのようです。
「問題はワインの生産量が少ないことですか?」
「毎日毎日、ワインのご注文を下さる皆さんに断らなければならないということに困っています。今朝も昔からのお客様から注文がきたのですが、70年代の私のワインをよく買って喜んでくれていたので本当はお分けしたいんです。ワインの生産量を減らして、ぶどうの収量をもっと抑えたいのですが、需要に応じようとするとなかなかそれができません」
シャルルさんのお人柄を垣間見ることができ、暖かさを感じ取ることができました。
私は5年前からアルマン・ルソーの全アイテムを毎年並べてテイスティングする機会を作っていました。
毎年状態が変わってきているのがよくわかり、とても勉強になるんです。
「去年はクロ・ド・ベーズが一番おいしかったのに、今年は閉じてしまってリュショットの方がおいしい」なんてこともあります。
ドメーヌ・アルマン・ルソーのワインは毎年毎年状態が変化していくのです。「ワインの面白いところってこんなところにもあるんだなぁ」と思っています。
ですから、今回樽の中から飲ませていただくワインはどんな感じなのか、とても興味のあるところでした。
地下セラーに案内してくださったのは、娘さんのコリーヌさんです。
テイスティングは次の順序でさせてくださいました。
後から聞いた話によると、どうやらテイスティングをする順序というのは、いつも決まっているようです。
スパイスのニュアンスを持ち、果実味もたっぷりで素晴らしいワインでした。
「このワインの醸造の時期は大変暑かったのでよく冷やさなければいけなかったのでとても大変でした」とコリーヌさん。
「マジの畑の続きにありますが、地質が全く違いますよね?」という質問に
「小石と化石がたくさん含まれる土壌で、すぐ下に位置するマジのワインよりも複雑さを持っています。小石の多い地面は太陽がよく照らし、そして熱を保ちます」 とのこと。
リュショット・シャンベルタン・クロ・ド・リュショットはモノポールで、ここの畑を所有しているのはアルマン・ルソーだけです。
リュショットはマジ・シャンベルタンのすぐ上の区画に位置して
「例年エレガントに仕上がるのがリュショットで、マジの方がパワフルになる」
とシャルルさんが解説してくださった通りの味わいでした。
「クロ・サン・ジャックはお好きですか?」と聞かれ 「大好きです!」と即答。「98年は開花するのに時間がかかり、とても難しいヴィンテージでした」
アルマン・ルソーを世に知らしめたのが、1級畑ながらも多くの特級を凌ぐというこのクロ・サン・ジャック。ルソー家でのテイスティングは、クロ・ド・ラ・ロッシュ、リュショットといった特級の後に飲ませてくださることからも、その実力が伺えます。
まさにワインの王様です。
素晴らしい人が、素晴らしい畑で、素晴らしい偉大なワインを産み出す。こんな奇跡のような取り合わせを、目の前にしたのは大いなる幸福です。
シャルルさんが目の前にいて、すぐ裏手にはシャンベルタンの畑=広いとは言えないブルゴーニュの畑の中でも神に選ばれた場所。
目の前の樽から注がれたワインは、神々しささえもつ、偉大な液体。こんな幸せがあるでしょうか。
ルソーさんのワインはテロワールと、そして造り手の顔(シャルルさんご本人)が思い浮かぶような味わいがします。人の個性、土地の個性がワインに乗り移ってきます。
私はワインスクールをやっていることもあり、授業後にワインスクールの仲間とアルマン・ルソーの全アイテムを同時にテスティングするチャンスに恵まれています。
私が毎回安定して優しく果実味を感じ、そしておいしいと思うのがリュショット・シャンベルタンです。
リュショットは山と山との間の扇状地にあり、扇状地に近ければ近いほど味わいが優しい感じになるとのこと。高度が高く、表土が浅くなるので肉厚さが減り、その分ミネラリーでエレガンスさの出るワインになるのです。
リュショットが一番早くにおいしくいただけるように感じていましたが、実際に畑を見てその理由に納得しました。
そんなリュショットがお気に入りなんですが、やっぱり大好きなのは変わらず、栄光のクロ・ド・ベーズです。
息子のエリックさんは80年代後半からずっと醸造を任されています。お父さまの教えをしっかりと守り、無口ですが、丁寧にワインを造ります。もちろん「俺が造っているんだ」という姿勢もありません。寡黙にワインを造り続けます。
そんな無口で才能溢れるエリックさんを一生懸命フォローしているのが、コリーヌさん。彼女は英語も操り、以前TV撮影でタレントのさんまさんや玉緒さんがやって来たときにも、楽しいジョークでかわしていたりと才気溢れる女性です。
この日案内して下さったコリーヌさんは空手の達人でした。もう10年以上も空手道場に通っているとのことで、かなりの腕前のようです。空手の先生は日本人の方で、この方がもう20年以上フランスに住んでいるのに今だにフランス語が話せないのだとか。
「私たちが日本語をマスターしなければ先生と話ができないの。だから今度、日本語を習うことにしたの」
もしかしたら、今度お会いしたときは日本語でお話が出来るかもしれません。
シャルルさんの暖かい眼差しが本当に素敵なんです。今風にいえば、癒されるような、そんな暖かな眼差しです。
素晴らしい家族の形を垣間見て、元気を与えていただいた私です。
私は今後もずっと、ドメーヌ・アルマン・ルソーのワインのファンでい続けます。どんな良いヴィンテージであろうとも、悪いヴィンテージになろうとも、シャルルさんを中心としたルソー・ファミリーが造るワインは、私の生涯でもっとも大切なワインの一つとして、ずっと付合っていきたいと思っています。
素敵な「人との出会い」で、ますますファンになってしまった、そんな旅でした。
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マジ・シャンベルタンの畑 |
シャンベルタンの畑 |
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グリオット・シャンベルタンの畑 |
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